三冠とは

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「三冠馬」
なんと崇高な響きだろうか。
3歳馬の頂点を決めるレースを3つ全て制覇した馬だけに贈られる称号だ。
しかしながらその品位を貶める表現がある。
「二冠馬」である。
クラシックを2つ勝利した場合に、付けられることのある称号だが、
この表現がどうにも、納得できないのである。
二冠馬は、三冠馬の2/3の偉業なのだろうか?
いや、断じて、三冠馬とその他には天と地ほどの差があっていいはずだ。
三冠は二冠の延長上にある称号か?
三冠の三は、確かに3つ勝った証の数字なのだが、
3つ勝って初めて「三冠」なのであって、
2つしか勝てなかった馬は、あくまでクラシック2勝馬なのである。
変則三冠も微妙に違う気がする。
クラシックを3勝したクリフジはまだ分かる。
変則二冠になると、もう何が何だか。
クラシックでないNHKマイルCとクラシックを勝って、
キングカメハメハディープスカイラインクラフトは変則二冠と呼ばれたが、
三冠を扱う項に、出てくること自体が場違いであると言える。
(別にこれらの馬が嫌いなわけでも、貶める意味がある訳でもない。)
三冠馬がそれ以後、大レースで勝利を収めた場合に、四冠馬、五冠馬と呼ばれることがある。
(※一部でテイエムオペラーが七冠と呼ばれることもあるが、見当違いも甚だしい。)
特に戦後初の三冠馬シンザンは天皇賞と有馬記念も制し五冠馬と呼ばれた。
これが数字の上での話となると、
ミスターシービーナリタブライアンは四冠馬、
オルフェーヴルは五冠馬、
ディープインパクトは六冠馬、
シンボリルドルフが七冠馬となるのだろうか。
ということは、シンザンオルフェーヴルは同格かというと、
これもまた、一緒くたに扱ってもらってはシンザンに失礼だということである。
シンザンが五冠馬となった当時、大レースとして認められていたのは八大競走、
5大クラシックと春秋の天皇賞と有馬記念だけ。
クラシックの内、2つは牝馬限定競走であるから、牡馬はその内6つしか走ることが出来ない。
また、当時の天皇賞は勝ち抜け制であり、一度天皇賞を制してしまうと、出走資格が無くなってしまう時代であった。
と言うことは、シンザンは、当時制することの出来る大レースを全て制覇してしまったということで、
五冠馬という称号を得たのである。
グレード制が導入されて以来、ジャパンCが八大競走と同格であるとされた。
最近では宝塚記念の価値が高くなってきた。
ミスターシービーシンボリルドルフの時代では、
天皇賞の勝ち抜け制が廃止され、牡馬は、7つ制することが可能だった。
(三冠、天皇賞春、秋、有馬記念、ジャパンC)
(※当時は宝塚の価値が高くなかった。)
ナリタブライアンより後ろの時代では、
宝塚の価値が上がり、8つ制することが可能だった。
(三冠、天皇賞春、秋、有馬記念、ジャパンC、宝塚記念)
今や競馬も国際化である。
海外に目を向ければ、格の高いG1レースは沢山ある。
それらを全部制することなど不可能。
国内で制覇できるG1がいくつかなどと言うのは、あまり意味のないことなのかもしれない。
しかしながら、冠を数の延長上で数えることは、全てを制したものに対して失礼なのではないか。
三冠とは、
all or nothing
なのである。

競馬コラム

Posted by 函館孫作