有馬記念廃止案

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1981年にジャパンCが創設、1984年より秋の天皇賞が2000mに短縮され、
それ以後は、2000~2500mという日本の実質上のカテゴリでは、
似たような距離区分の中で頂上決戦を秋に3度行うようになりました。
しかしながら、G1ともなれば、1戦1戦での肉体的疲労や精神的疲労が大きく、
秋の3戦全てを万全で臨むことは難しいのか、
国内を主戦にしながら、天皇賞秋、ジャパンC、有馬記念のいずれかを回避する陣営は少なくありません。
競走馬の状態を優先することは陣営の最も大切にすべきことなので、回避することに
異論を述べるつもりはありませんが、見ているファンにとってはどうしても出走表に
名前がないと寂しく感じてしまうし、物足りなさを感じてしまいます。
だとすれば、ローテーションの作りに問題があると思うのです。
ステップレースを使うことで、秋は全て参戦すると4戦が必要になります。
(秋の天皇賞もG1であるのだから、有馬やジャパンCのステップと考えるのはいかがなものか。
きちんと仕上げるべきだと思います。)
10月末に秋の天皇賞を行うと9月末、10月初にステップを使わなければならないために、
7月末に行われる春のチャンピオン決定戦である宝塚記念を使った馬は、夏季休養期間が2ヶ月に満たず、
充分な休養をすることが難しくなっているので、秋3戦のG1のうち1つを廃止してしまえば、
ローテーションにゆとりを持たせることができるのではないでしょうか。
またローテーションにゆとりを持たせることが必要なのではないでしょうか。
そこで検証してみました。
秋の天皇賞 10月末、東京芝2000mで行われ、菊花賞に距離適正がない3歳馬や多少距離に融通の利く短距離馬も出走してくる。
ジャパンC  11月末、東京芝2400mで行われ、海外からの強豪馬が出走し、日本で最も格の高いG1である。
有馬記念  12月末、中山芝2500mで行われ、創設されたときから秋のチャンピオン決定戦であり、優勝馬は年度代表馬に選出されることが多い。
この3つを比較したときに、まず国内の国際G1として最も歴史のあるジャパンCは
日本を代表する競馬場で行われ、国際的に根幹距離である2400mで行われ、
且つ国内最高賞金額であるという点から廃止の検討に値しないであろうと思います。
秋の天皇賞は、古馬中距離路線、3歳中距離路線、短距離路線が一同に介するレースであり、
カテゴリ別の衝突が見られる面白いレースであり、廃止してしまうと、各路線の層が薄くなる恐れがあります。
そもそも日本の君主の名を冠したレース廃止するというのはいかがなものかという感じがします。
消去法で行くと、廃止に値するは有馬記念となります。
有馬記念は距離的に見ると、ジャパンCとほぼ同距離であり、同一カテゴリに属するので、
ジャパンCか有馬記念のどちらかで良い訳です。
実際には、東京の2400mよりも息を入れるところが多いので、ジャパンCよりもスタミナの消耗が抑えられ、
若干距離に不安のある馬でも台頭できる可能性はある訳ですが、こちらに目を向けてみても秋の天皇賞とカテゴリが似てしまう訳です。
ジャパンC創設以前は、確かに秋のチャンピオン決定戦であり、その意味は大変重要なものでありましたが、
ジャパンCが創設されたことで、1ケ月の短い期間の間に、ほぼ同一条件、同一メンバーで再戦することになりました。
中山競馬場は小回りで直線が短いため、東京競馬場よりも展開に有利不利があると思われる。
そこに馬券的な妙味が生まれていることは確かですが、真のチャンピオンを決めるには
この中山2500mというトリッキーなコースでは、相応しくないと思います。
つまり、
・ジャパンC、秋の天皇賞とほぼ同一カテゴリであること。
・中山2500mという舞台がチャンピオン決定戦に相応しくないこと。
この2つで、有馬記念を廃止させるに十分な根拠だと思う訳です。
また、先述で「ローテーションにゆとりを持たせることが必要」と書きましたが、
年末のレースを削減しただけではゆとりは生まれないので、
秋の天皇賞、ジャパンCを1ヶ月後ろにスライドさせることにより始動時期を遅らせ、
夏季を休養に充当させることができ、ゆとりが生まれ、
レースにも最大限の力を発揮させることができるのではないかと思う訳です。
と、ここまでは馬の立場、レースの質からのみ論じてきましたが、
馬券を買う側にとって有馬記念の意味は大きいものがあります。
有馬記念を取ればその1年は勝った年だと思う人もあり、
1年通して有馬記念だけしか買わないというファンも少なくはないと思います。
それは1レースで最高で900億円近くも売り上げを出すという点で間違いはないでしょう。
有馬記念はなぜ売れるのでしょうか、
①年間を通して中央最後のG1レースであるから。
②有馬記念というネームバリューがあるから。
と、この2点に絞られるのではないでしょうか。
確かに最後のレースは買いたいと思います。
1日遊んでも、最終レースは何故か買いたくなります。
有終の美を飾りたいと殆どの人が思うのでしょう。
それがG1ともなれば尚更でしょう。
有馬記念という名前は誰でも知っています(と思います)。
競馬を知らない人でもダービーと有馬記念は知っています。
何故皆有馬記念だけは知っているのか。
それは、もう半世紀以上も年末の大レースとして定着し、
スポーツ紙各紙も有馬記念ウィークはほぼ1面で飾り情報も大量に流れ、
JRAの一大目玉商品であるからではないでしょうか。
これでは廃止の検討に至らないと考えられそうですが、
果たして本当にそうででょうか。
策としてジャパンCを年末にスライドさせることにより両方とも解決しないかと考えます。
まず年末に行われるという点で1つは解決。
また年末に行われることによりネームバリューが発生するとは考えられないでしょうか。
改革当初はファンに違和感を与えるのは当然ですが、慣れるまでにそう時間はかからないと思います。
牝馬三冠最終戦がエリザベス女王杯から秋華賞に変わったり、
マル外のダービーがニュージーランドTからNHKマイルCに変わったりと、今ではほとんど違和感がなくなってきていると思います。
なにより見たいのは各強豪馬のガチンコ対決であり、
回避によって「あの馬とあの馬の対決が見たかったなぁ」
なんてことも少なくなるのではないでしょうか。
以上より、有馬記念の廃止を提言します。

重賞改革

Posted by 函館孫作