ジャパンカップトライアルの創設を

先日のコリアカップおよびコリアスプリントは日本馬がどちらも圧勝で幕を閉じたが、
二つのレースを観戦し思ったことがある。

第1回ジャパンカップはこんな感じだったのだろうか。

筆者はジャパンカップが創設した時代に生まれた故、当時の状況を肌で感じた訳ではないが、
後の文献や資料を読むにあたり、外国馬と日本馬の実力の差を痛感させられ、
絶望に近い印象と、まずは世界に追いつけという生産界の意気込みがあったのではないかと考えている。

そして、先日の韓国での国際競走は韓国馬陣営が、当時日本と同じようなことを感じたのではないだろうか。

今日の日本競馬は、世界を追い越したとまでは行かないが、
ある部分においては、世界と肩を並べられるほどに強くなった。

今やパートI国となり、種牡馬の墓場と揶揄された生産界も、
父内国産馬が席巻するくらいに、日本の血が受け継がれていくようになった。

日本の馬が海外に挑戦しても、勝利という結果をもたらす可能性は十二分にある状況。

世界に追いつけという時代は終わり、追い越せと言う時代に入っているように感じる。

しかしながら、残念な現象も生まれている。
折角日本馬が力を付けてきているのに、
それを試す場面が日本では見られないということである。

というのも、日本馬と外国馬が直接対決する場所は、ほぼ海外であり、
外国馬が日本のレースのために来日することは今現在ほとんどなく、
ここ最近では、ジャパンカップ、安田記念、スプリンターズSに数頭が訪れる程度である。
日本で一流の外国馬と日本馬が戦う機会はほとんどないと言っていいだろう。

今や日本の重賞レースは、そのほとんどが国際レースとなっており、
外国馬の出走が可能なレースとなっているが、驚くほど日本に外国馬の参戦はない。

2017年、外国馬が出走したのは安田記念に香港の2頭
ビューティーオンリーとコンテントメントだけであると記憶している。

正直門戸を開いておいて、この状況は異常であると言えよう。

この流れは、たぶん日本で最も国際的である競走のジャパンCであっても変わらないだろう。
昨年はドイツから2頭、フランスから1頭の3頭が来日したが、
正直超一線級とは言えず、日本馬の返り討ちにあっている。
今年も多分強豪はやってこない。

過去には競馬のオリンピックと称されるほど参加国が豊富だったジャパンカップ

凱旋門賞馬バゴ、BCターフ馬のベタートークナウ、英愛オークス馬のウィジャボード
サンクルー大賞典のアルカセットなど面子が揃ったのは2005年が最後。

2007年には凱旋門賞馬ディラントーマスが招待を受諾したが、
馬ウイルス性動脈炎 (EVA) の疑いにより入国できず出走しなかったという事象もあるが、
それ以後はほぼ有力馬の参戦はないと言っていい。

いったいどうしてしまったのだろうか。

ジャパンカップに参戦する外国馬がいなくなった理由、
そもそもが日本に外国馬が参戦してこない理由、
これだ!という原因を挙げるのは難しく、筆者は複合的な要因であろうと考えている。

まず日本に来ない理由として考えられるのが、
・輸送リスク
・検疫リスク
・敗戦リスク
である。

輸送を考えるとやはり極東の島国に競走馬を運ぶのはリスクがあるように感じる。

競馬先進国である国際セリ名簿基準委員会認定のパート1国で考えてみると、
ヨーロッパはアイルランド、イギリス、フランス、イタリア、ドイツの主要5ヶ国が
陸続き(ドーバー海峡トンネル含む)で、EUという仕組みもあり、輸送に対する障壁は低い。

また、北アメリカではアメリカとカナダが陸続き、南米もそれぞれ陸続きになっており、
輸送に当然空路という選択肢があったとしても、主要国が隣接していることは、
単独の島国である日本に比べて容易であることは想像できる。

オセアニアのオーストラリア、ニュージーランドは
それぞれ陸続きで国境を有してはいないが、
競走馬の往来は活発で、南半球という馬産のサイクルも影響しているのだろう。

主要国の競走馬往来を考えると、日本は香港に最も近い国であり、
なるほど香港国際競走には日本馬の名前がよく連ねられる。

オセアニアの2国間の関係に近しいものを感じるが、
香港はパート1国に認定されてから日が浅く、競走馬生産を行っておらず、
南半球産の競走馬の輸入が多いことから、
オセアニア2国間のように活発にという訳にも行かないのだろう。

それにしても、似たような東アジアの香港には馬が集まり、
日本に来ないのはどういった訳だろうか。

二つ目の理由の検疫リスクである。

外国馬が日本の競走に出走しようとした場合、
千葉県・白井にある競馬学校の国際厩舎にて輸入検疫が義務付けられており、
5日間の繋留検査を行うことになっている。

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家畜伝染病予防法に定められた「輸出入検疫」については、
馬の場合、基本的には輸出の時5日間、輸入時10日間の繋留検査が実施されている。
その他、輸出国において存在している病気の侵入を予防するために、
ワクチン接種や特殊な検査を輸出国に対して義務づける場合もある。
ジャパンカップ競走等の国際招待競走に出走するために一時的に入国する外国馬については、
競馬学校内にある国際厩舎地区が、農林水産大臣より検査場所として指定を受けたうえで、
繋留検疫の施設として使用されている。この場合には、輸入検疫期間は5日間に短縮される。
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これに対し、香港やドバイの着地検疫は、
現地到着後には競馬場隣接の国際厩舎に入厩することが可能で、
すぐに調教が始められるという。

検疫は重要なシステムである。
口蹄疫や馬インフルエンザなど、馬産に直接影響のある病原体の感染を防ぐシステムな訳で、
これを省略したり簡便化したりすることは、馬産を行う国として、許されることではない。

しかしながら、競走馬の調教施設などの利便性を向上させるのは、必要な努力であり、
検疫を受けながら調教を施すことのできる施設を設定することは出来るのではないだろうか。
そもそもが白井の競馬学校まで成田から車で1時間はかかる距離なのである。
これは安全面から行っても短縮を考えなければならない距離でもある。

そう考えると、ドバイや香港などのの国際競走が盛んな
ヨーロッパやアメリカから離れている地域では
馬産は行われておらず、日本より簡便で済むと言うのは、当然なのかもしれない。

オセアニアの2国は日本より長い2週間の検疫期間を設けているが、調教施設は整備されており、
隣国同士が同様の基準で検疫していることから、オーストラリアとニュージーランド間では往来が活発である。

日本という国は、競馬においてもかなり異端な存在であるようで、
競馬主要国が固まっている地域以外の場所で馬産を行いながら競馬を開催しているのは日本くらいのものである。
とは言ったが、日本が競馬を開催しているのは、昔も変わらず。
今現在異端な存在になった訳ではない。

三つ目の理由の敗戦リスクである。

単純に言えば、外国馬が日本の馬に日本の馬場で勝つチャンスが少ないということである。
競馬の目的は勝利であり参戦ではない。
いくら招待制度で、輸送宿泊など諸々に費用がかからないと言っても、勝てる見込みのないレースに参戦するであろうか。

既に世界の高額賞金レースと比べて、
1着賞金3億円のジャパンカップはさほど魅力のある金額ではなくなった。
日本競馬全体の賞金水準は高いかもしれないが、1頭が出られるレースに絞ってみれば、
ドバイワールドC、凱旋門賞、ブリーダーズC、メルボルンC、香港Cより格下である。
それに付け加えて、日本馬のレベルは高く、
ここ10年のジャパンカップの勝ち馬が全てが日本馬なのも、
外国馬の参戦においては悪循環であると言えよう。
また、多くの関係者が懸念するように日本の馬場は硬く、高速馬場であり、これを皆嫌がる。
ジャパンカップを勝った最後の外国馬のアルカセットの勝ちタイムが2分22秒1であることも、敬遠される一つであるように思う。

上記3つの複合的要因が、日本に外国馬が来ない理由であると考える。
逆に考えれば、わざわざ遠い島国の賞金もそれほど高くなく、強い相手が走っていて、
馬場も合わず、勝ったところで大して評価も上がらない極東のレースに
自分の馬(それも自国なら大レースを勝てる馬)を出そうと思うだろうか?
自分なら招待されても二の足を踏む。

それを打開するための案として、前置きが長くなったが、タイトルの通りである
ジャパンカップトライアルの創設としたい。

冒頭述べたように、韓国と日本の実力差。
これを利用したい訳であるが、では具体的にどうするか。
国際セリ名簿基準委員会のパート2国を招待するのである。

今現在、パート2に認定されている国は、
アジアではインド、韓国、MRA(シンガポール/マレーシア)、トルコ、マカオの5地域
ヨーロッパでは、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーの3ヶ国
中南米のウルグアイ、パナマ、プエルトリコ、ベネズエラの4ヶ国
アフリカはジンバブエが1ヶ国
と13の地域と国が認定されており、これらの国に招待状を出すのである。
名称の通り、ジャパンカップの前哨戦として、高額賞金のオープン特別を9月~10月頃に実施し、
その中で勝ち上がった馬を引き続きジャパンカップ本戦へ招待するという流れだ。

その昔は地方馬にも招待枠があったが、それを復活させる意味でも、
地方の門別、岩手、浦和、船橋、大井、川崎、金沢、笠松、名古屋、兵庫、高知、佐賀にも
それぞれ招待状を出し、地方馬12頭で芝2400を争ってもらうのも面白そうだ。

ジャパンカップには地方選定馬が出走できる枠があるが、これが近年まるで活きておらず、
この枠を利用する意味合いもあり、これを2頭に枠を広げ、パート2国トライアルと地方馬トライアル優勝馬の2枠を
ジャパンカップに用意する訳である。

当然実力の低い馬が出走してくることになり、レースレーティングの低下を見込むが、
残りの枠は外国馬が来なければ、JRA馬が占め、さほど問題になる数値ではあるまい。

パート2国や地方馬の実力が低くて当然だが、万が一掘り出し物を見つけようなら、
ジャパンカップの意味がまた生きてくるだろう。

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